(2016.05.11) |
おととい、沈みかける夕日を浴びて自転車で職場からの帰り道を走っていたら、淡々と咲いている花を見かけました。綺麗だと思って、思わず立ち止まって携帯で写真を一枚撮りました。小さい花だけど、心を和ませてくれました。この花を調べたらなんとそれは「昼顔」です。昼顔は朝顔と同様に朝開花しますが、昼になっても花がしぼまないから昼顔と呼ばれているのです。この花は人気ドラマ「昼顔」のタイトルになり、不倫関係を象徴する花として日本で一気に知名度を上げましたが、中国では知名度から言えば昼顔より朝顔の方が圧倒的に高い。花が咲いても種をつけず、地下茎を縦横にのばすため、朝顔と違って、昼顔は園芸種として育てられず、雑草扱いされています。蕪村の句「ヒルガオや この道唐の 三千里」からもその繁殖力の強さが分かります。しっかりツルを絡ませて成長することにちなんで「絆」 という花言葉になりました。
「絆」とはいい言葉ですね。私はこの日本語の単語が大好きです。辞書によれば、絆とは「家族・友人などの結びつきを、離れがたくつなぎとめているもの。」です。そう、絆は人と人との関わりであり、心の繋がりです。私は国際交流員として日本に来たこの一か月間、中国にいた時よりずいぶん身近に人の絆を感じました。わざわざ中国語版の地図を用意してくれた職場の先輩、最初の一週間、毎日勤め先までの行き帰りと昼食を共にしてくれたイギリス人の同僚、ざるそばの食べ方を教えてくれたり一緒にしゃべりながら夜道を歩いたりするブラジル人の同期の同僚、「ニーハオ、ニーハオ」と言いながら私を家族の一員のように温かく迎えてくださった日中友好協会の方々、アパートの足りない生活用品を調達してくださった隣近所の方々、食卓を囲んで日本の中華料理を食べながら中国の本場の中華料理との相違点を語り合う職場の仲間たち。私たち国際交流員の来日数日後、すぐ熊本県や大分県などで一連の地震が起きました。中国のSNSウィーチャットのグループトークでみんなで励まし合い支え合って、クレア(一般財団法人自治体国際化協会)の担当者は毎日私たちの安否確認を行っています。人間は時々自己中心的になり、人とのつながりを忘れそうになり、海外での一人暮らしを始めるとどうしても孤独感情というものを免れないのですが、年齢、性別、国籍などの壁を乗り越え、人と人との絆を大切にしていけば「心の充実」は絶対にあると思います。
中国では国際交流活動・イベントについての報道はよくテレビで見られます。大掛かりな宴会が用意され、外国人のお客様にお決まりの中華料理を堪能してもらう、日中友好の看板を背にどこかの偉い人が演説をする、向こうの政治家のセッティングによって大挙して相手国を訪問する、外国からの訪問団がいつも中国の指導者と人民大会堂のような場所で記念写真を撮る、などです。こういった国際交流活動を大々的に推進している偉い人たちを派手で容姿端麗の朝顔に例えるとすれば、あまり人が見られないところで黙々と草の根レベルで国際交流を進めている人たちは、昼顔のような存在だと言えるでしょう。昼顔は大柄の朝顔のように派手ではなく、見映えがしないから、鑑賞用としては使えませんが、自らの力でしっかり咲いている感じです。確かに飾り気のない花ですが、温かい愛情と絆を感じさせてくれる花です。異国の地にいる私はこの花を見て、周りの人間の飾り気のない笑顔を見て、なんとなくほっとします。安心できます。
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