(2017.05.30) |
様々な宗教の食事制約
アメリカの多くの方はキリスト教の教徒ですが、ユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教等、様々な宗教の教徒たちもアメリカに暮らしています。また、キリスト教の中でも、カトリック教やモルモン教等、様々な宗派があります。日本では、宗教によって、食べてはいけないもの、つまり食事制約があることはご存知でも、具体的にどのような制約があるか、どの宗教にどのような違いがあるかはまだあまり知られていないように感じます。あまりなじみのない宗教の友達がいるなら、食事に誘いたくても、何を食べればいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。そのため、今回は、イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、キリスト教のそれぞれの食事制約について、基本的な説明したいと思います。
まず知っておきたいことは、同じ宗教でも、食事に関するルールに全く同じように従うとは限りません。例えば、ユダヤ教では、食事に対するルールは「kosher」(コーシャ)と言いますが、ユダヤ人でも、必ずコーシャなものしか食べないとは限りません。また、宗派によってルールが異なることもあります。例えば、キリスト教の宗派であるモルモン教では、カフェインの入った飲み物は飲んではいけないのですが、キリスト教の他の宗派ではカフェインに関する制約は特にありません。そのため、相手の宗教の食事制約についてある程度分かっていたとしても、本人に直接確認したほうが良いでしょう。
宗教による食事制約
宗教・項目 |
イスラム教 |
ユダヤ教 Kosher (コーシャ) |
ヒンドゥー教 |
キリスト教 |
肉 |
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魚介 |
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卵 |
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乳製品 |
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飲酒 |
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その他 |
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協力: 千葉市国際交流員 トリ・プロクター
Halal(ハラール)という言葉は、「許されている」という意味で、イスラム教では食事だけではなく、宗教の教えによって許されていることを全て「ハラール」と言います。ハラールの反対はharam (ハラム)で、「禁止されている」という意味です。食べてはいけない豚肉はハラムと言えます。
Kosher(コーシャ)という言葉の文字通りの意味は「適正」であり、コーシャな食べ物というのは、「ユダヤ人にとって適正な(神様の教えに従った)食べ物」という意味です。ちなみにアメリカでは、コーシャが一般的に話し言葉として使われるようになっており、ユダヤ人ではなくても、「合法、適切、適正」という意味で一般的に使われています。
見ての通り、ルール、制約、習慣が多くあります。宗教によって似ている制約もあれば、全く反対の制約もあります。
アメリカでは、多くの宗教の教徒が一緒に住んでいるため、それぞれの宗教に配慮するサービスがあります。例えば、大学の食堂では、ハラールな食べ物にハラールであることを表示するマークがついていることがあります。また、コーシャな食べ物を提供するコーシャコーナー等もあります。また、ベジタリアンの食事オプションも必ずあり、それぞれの食事制約のある方への配慮が見られます。
スーパー等にも、ユダヤ教の大事な祭りである過越(passover)の時期に近づくと、コーシャの食べ物を表すポップが増えます。また、カトリック教で祝われるレント(イースター(復活祭)までの46日間)の時期に、金曜日に魚以外の肉を食べることが禁止である習慣に配慮し、金曜日に魚が割引されることもあります。他にも、商品にコーシャやハラールの食べ物であることを表示するマークがあり、コーシャあるいはハラールの食品専用のスーパーもあります。
宗教が違っても、誰もが美味しい食事を食べることができるよう、宗教による異なる食事制約や習慣を知っておくと良いでしょう。
※私自身はカトリック教の教徒であり、実際に経験している宗教の習慣はカトリック教のみです。他の宗教については、適切な情報を出来る限り調べましたが、詳しい情報はそれぞれの宗教の教徒に確認することをおすすめします。
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