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世界で一番翻訳された小説家アガサ・クリスティはイギリス人

世界中で、人気がある小説は、言語、文化によって異なります。しかし、翻訳版があるおかげで、元々、外国語で書かれた小説でも他の国で読むことができます。今年の2月にイギリスで人気がある日本人の小説家についての記事を書きました。その際は、日本語から英語に訳されている著書についてでしたが、今月は、逆に英語から日本語によく訳されている小説家について書きたいと思います。実は、世界で一番翻訳された個人の小説家はイギリス人です。その小説家は、よく「ミステリーの女王」と呼ばれ、推理小説を書いたアガサ・クリスティです。日本語を含めて、彼女の書いた著書は100言語以上に訳されています。個人的に私の一番好きな小説家です。

 

アガサ・クリスティは1890年にイギリスの南西にあるデヴォン州に生まれ、1976年に85歳で亡くなりました。1921年から作品を書き始め、生涯で66冊の推理小説、15冊の短編集を書きました。ジャンルは、ミステリーで、全ての小説に殺人の内容が含まれています。シリアスな犯罪なので、彼女の書く小説は悲しいイメージを持つかもしれません。しかし、気軽で、面白みのある推理小説です。そのため、彼女の書く小説は読みやすいです。「コージー・ミステリー」というジャンルがありますが、アガサ・クリスティはそのジャンルの創設者で「コージー・ミステリーの女王」と言われています。最初の小説は1921年の「スタイルズ荘の怪事件」であり、1926年の「アクロイド殺し」のおかげで、クリスティの人気があがったため、クリスティの名作と言われています。

 

1910年代~1930年代は推理小説の最盛期でした。その時代に他の人気がある小説家はマージェリー・アリンガム(イギリス)、ドロシー・L・セイヤーズ(イギリス)、ナイオ・マーシュ(ニュージーランド)、パトリシア・ウェントワース(イギリス)です。もちろん、アガサ・クリスティの前にもミステリー小説が人気でした。特に、イギリス人のアーサー・コナン・ドイルが1887年に初めて発表したシャーロック・ホームズ作品はミステリー最盛期のきっかけだと言われています。

 

ミステリー最盛期における一番有名な小説家は主に、イギリス人です。最盛期のイギリス作品は日本の文学にも影響を与えました。日本では本格ミステリーというジャンルがありますね。本格ミステリーの最初の小説家は平井 太郎で、江戸川乱歩というペンネームを使いました。1923年に「二銭銅貨」というミステリーとゴシック小説を書きました。江戸川乱歩のペンネームは、有名なアメリカ人のミステリー著者、エドガー・アラン・ポーの名前が由来となっています。横溝 正史も本格ミステリーの中における大事な小説家ですね。1987年に綾辻 行人は「十角館の殺人」を書き、その小説はアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」に基づいています。「そして誰もいなくなった」という作品は、無人島に誘われた10人が、ひとりひとり殺されていいき、だんだん誰が殺人犯が明らかになります。世界で一番翻訳された小説家であり、「ミステリーの女王」としてアガサ・クリスティは世界中に影響を与えていますね。「十角館の殺人」に登場する7人のキャラクターは十角館がある無人島に行って、次々に殺されてしまいます。この7人のキャラクターは、ミステリーのファンなのでミステリー最盛期の著者のあだ名が付けられています。例えば、「アガサ」(アガサ・クリスティ)と「ポウ」(エドガー・アラン・ポー)というキャラクターがいます。日本の小説にイギリス人小説家の名前のキャラクターが登場するということは、いかにイギリス人小説家の影響が大きいか分かりますね。最近の、2月の記事のテーマでも述べましたが、英語に翻訳されている日本語の小説が増えています。その中には、本格ミステリーも見られます。例えば、横溝 正史による「本陣殺人事件」、「犬神家の一族」等の小説が最近翻訳されました。イギリスの本屋でこの2冊を見たことがあります。「本陣殺人事件」は日本語で1946年に発行されましたが、英語版は2019年に発行されました。「十角館の殺人」も英語版があり、2015年に発行されました。日本人は長い間、日本語に訳されたイギリスをはじめとする英語圏のミステリー小説を楽しめていますが、現代では英語圏の方も英語に訳された日本の本格ミステリーを楽しめますね。

 

これからはアガサ・クリスティに関して、どんな作品を書いたのか説明します。すでに述べましたが主にはコージー感のあるミステリーを書きました。一番人気がある小説は、「オリエント急行の殺人」、「ナイルに死す」、「牧師館の殺人」とすでにご紹介した「そして誰もいなくなった」です。作品の中に、二人の有名キャラクターがいます。それは、エルキュール・ポアロというベルギー人の探偵とミス・マープルという犯罪を解決することが得意な老姿です。「オリエント急行の殺人」と「ナイルに死す」はエルキュール・ポアロが登場する小説で、「牧師館の殺人」はミス・マープルが登場する小説です。それ以外、この二人が登場しない小説も多く、「そして誰もいなくなった」はその一例です。他の面白いキャラクターとして、アリアドネ・オリバーという女性は7冊の小説に登場します。私の名前と同じですね!でも、それが今回紹介した理由ではありません。実は、アリアドネ・オリバーはアガサ・クリスティ本人に基づいています。作品の中では、アリアドネ・オリバーはミステリー小説家です。リンゴが大好きで、アガサ・クリスティもリンゴが大好きでした。

 

殺人の場面として、「密室系のミステリー」が多いです。鍵のかかった密室の部屋や、船や飛行機など、外部から人が入ることができない状況で殺人が行われています。ミステリーの小説によく見られるものです。結末としては、この「密室の空間」にいるキャラクターのみが容疑者です。「オリエント急行の殺人」、「ナイルに死す」と「そして誰もいなくなった」は全て「密室系のミステリー」です。「オリエント急行の殺人」では、13人の登場人物がエルキュール・ポアロと一緒に寝台列車に乗ることとなります。作品では、1人が殺されているので、他の12人は容疑者になります。「ナイルに死す」では、エルキュール・ポアロがナイル川で乗船している時、殺人が行われます。「牧師館の殺人」は少し違いますが、ミス・マープルが住んでいる牧師館で村人が殺されています。村人全員が容疑者になりますが、「密室系のミステリー」ではありませんね。他の作品では、飛行機、屋敷、パーティー、ホテル、歯科医院、ゴルフ場、学生寮といったものもあります。

 

そんなコージー・ミステリーの推理小説だけではなく、アガサ・クリスティは政治等に関するスリラーも書きました。冷戦の時代に、いくつかの冷戦スパイ小説を書きました。例えば、「バグダッドの秘密」と「死への旅」という小説があります。アガサ・クリスティがスリラーのスパイ作品を書く時、筋書きはたいてい、スパイではない一般人が突然スパイの世界に入り込むことになり、スパイにならなければならなくなるというものです。

この場合、この新米スパイがミスを犯したり、どんな行動をとればよいのかわからなかったりするため、ストーリーを面白くします。時々、そのスリラーの物語は非現実的だと思われてしまうので、クリスティの推理小説の方がスリラーより人気が高いです。個人的には、非現実的な物語ですが、キャラクターが面白いので、全体的にクリスティのスリラーの方が好きです。

 

他のジャンルとして、メアリー・ウェストマコットというペンネームで、6冊の小説を書きました。他のペンネームで作品を書いた理由は、ミステリーに関係ない小説も書きたかったからです。20年間ぐらい、メアリー・ウェストマコットがアガサ・クリスティであることは誰にも分りませんでした。メアリー・ウェストマコットの作品は家族関係、愛、心理とクリスティの人生について描いた作品です。1930年に初めてそのペンネームで「愛の旋律」をという作品を書きました。1949年にそのペンネームがアガサ・クリスティであることがばれたにも関わらず、1950年代にメアリー・ウェストマコットとして2冊の作品を書きました。

 

小説と短編集ばかりでなく、多数の戯劇も書きました。1930年に戯劇を書き始めてから、20冊以上書き、一番有名な作品は「ねずみとり」です。世界で最も長く上演されている劇で、ロンドンのウエスト・エンドで1952年から2020年まで休演されることなく上演されました。新型コロナウィルスの影響で、20203月に休演となりましたが、20215月に上演が再開されました。2万9000回以上上演されています。「ねずみとり」という作品は推理ものなので、観客が他の観客の人と劇の終わりについて話さないという決まりごとがあります。

 

要するに、世界で一番翻訳された小説家として、推理小説の最盛期においてアガサ・クリスティの影響は大きいです。亡くなったのは50年ぐらい前ですが、推理小説を書いている小説家はアガサ・クリスティの書き方参考にして書いてみる人が多いです。クリスティがあまりに人気なので、現在でも出版社は新しい短編集や小説を発行しています。多くのテレビ番組や映画で脚色が加えられていますが、また、新たに作品が作られています。例えば、1989年から2013年までの「ポアロ」と2004年から2013年の「マープル」はイギリスで人気のあるテレビドラマです。「オリエント急行の殺人」(オリエント急行殺人事件、2017年)と「ナイルに死す」(ナイル殺人事件、2022年)は、脚色が加えられ、ハリウッド映画で最近公開されました。この作品の前にも、脚色された映画作品があり、特にイギリスのスタジオで1974年に作成されたオリエント急行殺人事件があります。イギリスの観光地であるデヴォン州にある「グリーンウェイ・ハウス」にはアガサ・クリスティの家があります。実は、その家は「死者のあやまち」という小説で登場します。日本語版の小説もあるので、興味があったら読んでみてください!今回紹介した小説以外に、私の大好きな小説は「ひらいたトランプ」、「雲をつかむ死」、「忘られぬ死」、「ねじれた家」と「書斎の死体」です。

 

アガサ・クリスティの小説の英語版(イギリス、現在)と日本語版の表紙の比較:

  • 1921年「スタイルズ荘の怪事件・The Mysterious Affair at Styles(日本語版:1937年)
  • 1926年「アクロイド殺し」・The Murder of Roger Ackroyd(日本語版:1955年)
  • 1939年「そして誰もいなくなった」・And Then There Were None(日本語版:1955年)
  • 1934年「オリエント急行の殺人」・The Murder on the Orient Express(日本語版:1935年)
  • 1937年「ナイルに死す」・Death on the Nile(日本語版:1984年)
  • 1930年「牧師館の殺人」・The Murder at the Vicarage(日本語版:1954年)
  • 1956年「死者のあやまち」・Dead Man's Folly(日本語版:1958年)

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